傷は宝物。―何百人ものアーティストをプロデュースして―
プロデューサーおすすめ
何百ものアーティストやプロダクトのプロデューサーとして活躍してきた井出さん。
アーティストや音楽を支えるものは、皮肉にも「傷」だと言います。
アーティストは、心の傷が宝物になります。
「世の中には色々な仕事がありますが、特にアーティストは、心の傷というのが大きな宝物になります。
何故かというと、自分の中にある傷によって、
色々な人のことが見えてきたり、
自分のことに共感できる人が圧倒的に増えるでしょ。
そういうものをいっぱい持っている人、特にアーティストは逆に宝物になるのです。
そのことによって、より誰かに響かせることもできるし、
受ける人の人数も多くなってくるんです。」
潤いと透明感が出てくる
「傷やトラウマみたいなものは、基本的には嫌なもの。
それを不意に思い出したり出てくること自体がすごく怖いですよね。
さみしいとか、孤独感がでてきたりとか、不安だとか。
分かってもらえない感じとかが出てくる。つらい気持ちになります。
ただ、その出てくる嫌なものは、どう表に見えるかというと、
湿度というか、潤いと透明感として現れるんです。
これがすごくポイント。」
100%の歌は、実はあまり伝わっていない。
「歌が100%になってしまうと、実はあんまり伝わってない。
歌は6割くらいで、4割くらいはそういう心から響いてくるようなパワーが必要なんですよね。
自分の中にある傷になった体験が、そのパワーです。
これが意外と大事なのです。
音楽だけに言えるわけじゃないだろうけど、音楽って残酷だなあと思います。」
トラウマをどう捉えるか。
「トラウマをどう捉えるかはすごくポイントで、
思い出したくもないし、嫌だと思ったら、もちろんそうなんだけど
それによって出てくる美意識とかデリケートさとか、
それも見てあげて欲しい。
苦しいし嫌なんだけど、一つの宝物みたいに言えるということだよね。
それだけ切り離して考えがちだけど 、それまで含めて自分だから。」