110年

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ビンテージのマウスピースを集めるようになって、もう4年になります。

歴史を辿るように古いマウスピースを探し続けてきましたが、
結構探しつくしたためか、最近は新しい出会いはなくなってきました。
古いものなので、時代と共に出てこなくなってくるのはある意味当たり前。
そう思うと、良い所まできたかな…
と思っていたところに、いきなり、まだ発掘していなかったマウスピースが
顔を現しました。

セルマーという、SAXを実質上育てたようなフランスの会社があるのですが
そこがほぼ最初に創ったものです。
設立当初創られたものは、今のモノとはマークが違っていて、丸の中に、H.SELMER PARISとかいてあります。
1910-26年頃までがこのマークなので、もう100年ぐらい前のこと。
当然こんなものは世の中にないし、あったとしても外に出さないような貴重なものです。貴重すぎて売りにも出さない。
突然ぼろぼろの姿で出て来て、安く買ってしまいました。
アメリカのConnecticut州Hawleyvileという所から買いました。

「やったー!」と思い、到着するのを待っていたら、2日後にまた凄いものを発見。
購入したマウスピースと同時期のリガチャー(リードを止める金具)も売りに出されていたのです。
これも同じマークをしていて、やっぱり1910-26年の間に創られたものでした。
これはVirginia州のAlexandoriaという地域に会ったようです。

「ことによって、ジャストフィットするんじゃない?
 これの為にに創られたものなんじゃない?」
と思わざるを得ませんでした。
写真だけではなかなか分からないところですが、
職人の知り合いに聴いたらおそらくそうだ、ということで買うことにしました。

こうしてセルマー初期のマウスピースとリガチャーが日本に届きました。
どきどきしながらあわせてみたら…なんとぴったり!
これはさすがにびっくりしました。

110年ぐらい前にパリで作られたものが、何かしらの段階でアメリカに渡り、
きっと何度か売られながらたまたまVirginiaとConnecticutにいて。
それらが2020年の9月の同じ様なタイミングに日本に来て
合わせてみたらぴったりだった…ものすごいストーリーです。
アメリカの職人に言ってみたら、当然、全員びっくりです。

もともとこのセットだった訳ではないかもしれないけど、
この時代のものが同じ時期に集まったというのは、
離れ離れの兄弟が110年後に再開したような、
110年感別れていた人たちが一緒になったような 、
感激的なものでした。

これはずっとマウスピース研究を続けてきたお駄賃だなと思いました。

浦上咲恵

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Sound Writer / Sound Stylist。井出さんと一緒に仕事をしながら感じる、浴びる程の「ゾクゾク」感を届けたいと思い、日々執筆しています...

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