無音のエネルギー

プロデューサーおすすめ

以前から何名かドラマーを紹介してきましたが、
彼らは物凄くスピーディーかつスリリングに音を入れていくタイプだったり、
パワフルに重いリズムを刻んでいったりと、
それぞれ違うアプローチでインパクトがありました。

今日ご紹介したいドラマーは、またちょっと違います。
いわば「間のパワー」みたいなものがある、Ash Soanさんという方です。

音を出す前に間を空けることを「音を溜める」というんだけど、
テンポのまますぐに行かず音を溜めると、間を作るあいだにエネルギーが溜まり
次にスタートするときに炸裂するような物凄いエネルギーになります。
これを上手く使っている人は中々いません。
叩くときだけじゃなくて、叩かない時もすごいんです。

やっぱり、「間」は音楽にとっては命です。

少し詳しくお話ししましょう。
例えば、CDをプレスする際に「曲順や曲間をどうするか」を
決めるプロセスがあるのですが、特に曲間の長さは重要です。
まず、演奏が始まるタイミングというのは、実際に音が出る瞬間という訳ではありません。
音が始まる前の間も含みます。
どうやら私たちは、音が始まる前から演奏が始まっているように
捉えているようで、 音が出るところから曲が始まると
切れているように感じます。

また、演奏が始まって、 残響等長い減衰音が消えた瞬間に音を切ると、
急に現実に引き戻される感じがして、
ほんとうに音がなくなった後も一呼吸や二呼吸の間が必要です。

演奏が終わって、音が終わって、音はないんだけど残響が残ったこの辺かな?
というように、間も含めて音楽として扱っています。
音はないんだけど、「ここにすごく入っているなあ」と感じます。

また、雅楽、能や歌舞伎は「間の芸術」と言ってもいいぐらいです。
西洋音楽とはやや違っていて、決まったリズムに乗っておらず、
時間が一定していない間が随所にでてきます。
次の音がどこで来るか、というのはカウントしていて分かるものではなくて、
まさに体や筋肉で覚える域です。
指揮者もいないのに、数えられない間の読み合いでパッとみんなが合う。
そんな感じです。

名演なんかだと、間の中に音が聴こえるようなことが良くあります。
要するに、間は止まっているわけではなくて、音楽の中では進んでいる。
そこに音はないけれど、エネルギーみたいなものがある
演奏者の発するエネルギーみたいなものがむしろ充満している。
そして、次に音が出ていた時にそれが炸裂する。

これが間です。
演奏の本質を付いているなと思います。

浦上咲恵

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Sound Writer / Sound Stylist。井出さんと一緒に仕事をしながら感じる、浴びる程の「ゾクゾク」感を届けたいと思い、日々執筆しています...

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