虹を見上げて
プロデューサーおすすめ
「聞こえる人生か、聞こえないけど波乗りのある人生か」
この本は、 2歳で進行性の感音性難聴になり、20歳の時にはどちらかを
選ばなければならなくなった末、海を選ぶ決断をした
とあるプロボディボーダーの女性のエッセイです。
自分がトークショーで対談相手を選べと言われたら、真っ先にまっ先に
この甲地由美恵さんと、ぼのぼのの作者であるいがらしみきおさんが出て来ます。
音っていうのは空気の振動だけじゃないと自分も良く公言していますが、
この本を読むと、それがよりよく分かります。
おじいちゃんはよく、こんなことをいった。
甲地由美恵「虹を見上げて」より抜粋
「どうしておめえだけなんだ。じいちゃんは、おめえの耳を治してあげたかったなあ。
…でもな、聞こえとったら、もしかしておめえはどうしようもねえ悪者になっていたのかもしれない。きっと、神様のはからいでおめえから音を奪ったんだろう。だから、だぁれも恨んじゃダメだ。かあちゃんは悪くないし、とおちゃんもだぞ。
人の話が耳できけなけりゃ代わりに『胸』で聞け。相手の想いも『胸』で聞くんだぞ。どんなにいい顔してるヤツでもべっぴんさんでも、話は必ず『胸』で聞け」
音楽で感激するということは、空気で耳に入ってくるものだけでなく、
アーティストのパワーが耳じゃなくて胸に来るというのがあって、
空気の振動よりも大きいのです。
それが心の奥に届くと、感激がより深まります。
そして、聞いた側が感激したということは、発している側にも伝わります。
この本は、すごく透き通っていて、「胸で聞く」ということ自体が
本当のことや深い所を聞いているような、
音楽に接するときと同じものを感じました。
いつか機会があったらお会いできるといいなぁと、ずっと思っています。