楽器って?2
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引き続き、楽器博物館のお話です。
紹介した図録に、この度文を寄稿させて頂きました。
「深化する音の風景」というタイトルです。
音の風景と言えば、楽器をやっていると色々なものが楽器に見えて来ちゃうということがあります。
例えば、建物なんかも言ってみれば楽器です。
こんな話があります。
イタリアの旧市街に住んでいたとある家族が。最近新市街に移ったのですが、
生まれ育った旧市街が懐かしくなって結局旧市街に戻ってきました。
その理由を聞くと、どうも暮らしている人は一緒で、雰囲気も一緒だそう。
では何が違うのか?
「違うのは、音です。」
新市街は車の音がメイン。旧市街は迷路だらけで細い道。石畳に人の声が響いて、人の声で町の音楽が創られていました。
「それが気持ちが良いから戻ってきたんです。」
喋り声が作る音楽みたいなものがあるんですね。
そうやって考えると、街だろうが建物だろうがぜんぶ楽器だという風に考えられます。
そして、そんな風に思えると、色々なものが見えてきます。
私も以前手掛けた東京銀座資生堂ビルは、「建物を楽器にしよう」という前提で音響設計をしました。
1Fはやらわかくてレトロ。上に行くと透明感のある高い音になっていきます。
表参道ヒルズもそうで、100を超えるSPが調和して一つの空間を創っています。でも一人一人も個性があるという、コーラスのような空間です。
このような考え方をしていくと、街や車など、身の回りの風景全てに
音の未来が見えてくるという風に思いました。