何故貝殻を耳に当てると波の音がするの?

音のこばなし

以前、朝の生放送番組で音の質問に答えるコーナーがあり、
私が解説者として出ていたことがありました。

その時に出てきたとある質問が、
「何故貝殻を耳に当てると波の音がするの?」
というものでした。
今日はこの種明かしをしたいと思います。


実はどこにでもあるノイズにヒントが。

「部屋の中の外でも中でも、私たちの周りには”ザー”というノイズが世の中どこに行ってもあります。
無音のように思えても、あります。

例で言うと、海を遠くで聴いているような音。
風の音とか、森の葉っぱが風になびいている音。
ピンクノイズ風といています。

その音が本当になくなってしまうと、
頭がおかしくなるような、気持ちの悪い状態になります。

無音に近い空間があるとすると、無響室という、音が全く響かない部屋がそうです。
外の音も完璧に遮断することになっていて、
自分の身体の中の音しか聞こえてこない場所です。
あえてこのような部屋を創らない限り、ノイズはどこに行ってもあるということなんですね。

このノイズに、貝殻の音のヒントがあります。」

貝殻を当てると生まれるわずかな空間

「貝殻を耳に当てると、耳との間にわずかな隙間ができます。
この隙間にノイズが入って来て起こる様々な現象が、あの波の音です。

隙間から音が入って来ると、音は貝の渦巻きの中で色々な干渉を起こします。
大きくなったり、小さくなったり、
高い音が強調されたり、低い音が強調されたりと、
音の状態が複雑になります

また、中で共鳴もします。
音が少し大きくなり、渦巻きが引き起こす干渉を合わさって
ゆらぎのように聴こえてきます。
きっと、これが、波のような音に聴こえるのですね。」

音とイメージは強く結びついている

「これまでの説明でお分かりの通り、貝殻のあの音は、
貝殻が出している音ではありません。(このほうが、夢がありますが)
世の中どこにでもあるノイズが貝殻と耳との隙間から入ってくることで、
貝独特の空間の中で干渉や共鳴、ゆらぎを起こして波のように聴こえるということです。

ただ、波の音じゃないと種明かしをしたところで、
『波の音だなぁ』と私も思います。

というのも、音というものは、実際の音が何なのか?ということがさほど重要ではありません。
一回『波みたいだなぁ』と思うと、波に聴こえますし、それでいいのです。

音は、人間のイメージや直感と強く繋がっています。
イメージにより、認識が増幅されて、波の音に聴こえる。
こういう、種明かしよりももっと面白いことが起きているのだと
そう思って頂けるといいのではないかと思います。」

浦上咲恵

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Sound Writer / Sound Stylist。井出さんと一緒に仕事をしながら感じる、浴びる程の「ゾクゾク」感を届けたいと思い、日々執筆しています...

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